相続した実家、売る・貸す・住む。判断の順番を整理します
親が住んでいた家を相続することになった。あるいは、これから相続する見込みがある。そのとき多くの方が最初にぶつかるのが、「売るのか、貸すのか、誰かが住むのか」という問いです。
この問いに、いきなり答えを出そうとすると迷います。順番を変えるだけで、判断はずいぶん楽になります。この記事では、私たちが実際のご相談で使っている整理の順番をご紹介します。
先に決めるのは「使い道」ではなく「制約」
売る・貸す・住む。この三つを最初から比べようとすると、どれにも一長一短があって決まりません。先に確認すべきなのは、そもそも選べる選択肢がいくつ残っているのか、ということです。
確認する項目は次の四つです。
- 名義:誰の名義になっているか。共有なら共有者は誰か。相続登記は済んでいるか
- 建物の状態:そのまま貸せるか。人が住める状態か。修繕にいくらかかりそうか
- 立地:賃貸需要があるエリアか。売るとしたら買い手が土地を求めるのか、建物を求めるのか
- 家族の意向:手放すことに反対する人はいるか。将来住みたいと思っている人はいるか
この四つを確認すると、たいていの場合、選択肢は三つではなく一つか二つに絞られます。たとえば築50年で駅から遠い一戸建てなら、そのまま貸すのは現実的ではありません。共有名義で一人が反対しているなら、売却はいったん先送りになります。
相続登記は2024年から義務になっています
意外に見落とされがちなのが名義の問題です。2024年4月から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務化されました。正当な理由なく怠った場合、過料の対象になります。
名義が故人のままだと、売ることも、担保に入れることも、原則としてできません。「どうするか決まってから登記しよう」と考えていると、決まった時点で数か月動けなくなります。方針が決まっていなくても、登記は先に進めておくことをおすすめします。
売る・貸す・住むを比べるときの見方
売る
いちばん早く終わり、いちばん後腐れがない選択肢です。共有名義であっても、現金に換えてから分ければ分割の争いは起きにくくなります。一方で、思い出のある家を手放すことに家族が納得するかどうかは別の話です。
数字の面では、譲渡所得税がかかる可能性があります。相続した家には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使える場合があり、条件を満たせば譲渡所得から一定額を控除できます。適用条件は細かいので、売ると決める前に税理士に確認しておくと安心です。
貸す
家を残したまま収入を得られる選択肢です。ただし、貸すには「人が住める状態」にする必要があります。給湯器、水回り、雨漏り、シロアリ。築年数が経った家では、貸し出す前に数百万円の修繕が必要になることも珍しくありません。
その修繕費を何年で回収できるのか。空室になった期間はどうするのか。この二つを試算してみると、「思っていたほど残らない」という結論になることもあります。逆に、駅近で需要のあるエリアなら、売却より手取りが大きくなるケースもあります。
住む
ご自身やご家族が住むという選択肢です。住宅ローンが不要になるため、家計の面では大きな効果があります。ただし、通勤・通学・生活圏が変わることの影響は数字に表れません。また、他の相続人がいる場合は、住む人と住まない人の間で不公平感が生まれやすい点に注意が必要です。
「今は決めない」という選択肢について
結論を出さずに保有し続けるという選択も、もちろんあります。ただ、これは「何もしない」ではなく「保有を選んだ」という判断です。保有には固定資産税、火災保険、最低限の管理という費用がかかり続けます。
問題は、決めないまま時間が経つと選択肢が減っていくことです。建物は傷み、賃貸に出せる状態から遠ざかります。相続人の世代が下がれば、共有者の数が増えて話がまとまりにくくなります。保有を選ぶなら、「いつ見直すか」を決めておくことをおすすめします。
迷っている段階でご相談ください
ここまで読んで、まだ決められないと感じられたかもしれません。それでいいと思います。相続した家をどうするかは、数字だけでも気持ちだけでも決まりません。
ist株式会社では、売却を前提としないご相談を承っています。現況を確認し、選べる選択肢を並べ、それぞれどうなるのかをお示しするところまでが最初の仕事だと考えています。結果として「今は何もしない」となることもあります。
東京・神奈川・埼玉・千葉を中心に対応しています。まだ何も決まっていない段階で構いませんので、お気軽にお声がけください。
※本記事の税制・法令に関する記載は、掲載時点の一般的な内容です。制度は改正されることがあり、個別の事情によって取り扱いが異なります。実際のご判断の前に、税理士・司法書士などの専門家、または当社へご確認ください。